祝福2

「ただいまー、ティファ」
「ただいま。あ、クラウドが起きてる」


遅い朝食とも、昼食ともつかない食事をとっていると、子供特有の高い声が扉の方から聞こえてきた。
マリンとデンゼルだ。
茶色の長い髪をお下げにしたマリンは成長すればするほど、雰囲気がエアリスに似てくる。
マリン自身も、幼い頃に助けて貰ったエアリスのことを尊敬しているらしい。
デンゼルの星痕はあの教会の泉によって浄化され、もう痛み、苦しめられることも無い。
エアリスが、俺の元へ届けてくれた、大事な子だ。

「おかえりなさい。荷物はココにおいてくれる?」
「うん」

たくさんの食料が入った袋を、ティファに指定された場所へと持っていく二人。
俺は食べ終わって水を飲みながらそんな二人を眺めた。
すると、荷物を置き終わったデンゼルが近付いてくる。
ん?
グラスをカウンターに置いて、首を傾げながら目線を合わす。

「おはよう、クラウド」
「ああ……おはよう。デンゼル」

目を細めて、くしゃりと髪を撫でてやる。外側に跳ねた薄い茶髪は子供特有の質感がして、柔らかい。
デンゼルも気持ちよさそうに、気恥ずかしそうに笑う。
不思議なことにデンゼルは、俺のことを尊敬してくれているようだ。
俺は、英雄なんかじゃ無いのに。

「ああ!デンゼルずるーい、私もクラウドに撫でて貰う!」

マリンが俺とデンゼルの様子を見て、そう叫んだ。
配達のある日は、あまり二人の相手をしてあげられない。
寂しい想いをさせてしまっているのだろうか。
俺がココでのんびりとくつろいでいると、構ってくれオーラが見える程スキンシップをとりたがることが多い。
そんな俺たちの様子をティファは苦笑と共に眺めているだけだ。
これも、平和で幸せな一つの家族の光景なのかもしれない。
血は繋がっていなくとも。



子供たちのパワフルさに、相手をしてクタクタになった俺は自室へと戻った。
と言うより、二人に押し込められた。
ビックリさせたいから呼ぶまでお店には来ないで、だって。
ティファの監督の元、二人で一生懸命準備をしているのだろう。
その気持ちだけで充分嬉しい。

ソルジャーと同じ施術を施された故に、身体的に疲れることは無いけれど精神的には摩耗する。
二人が呼びに来るまで、少し眠るか。
折角準備してくれているのに、俺が疲れた顔をしていれば心配を掛けることになる。
それは申し訳ないから。

殺風景な部屋の中、一際存在感を醸し出すベッドに倒れ込んで、目を瞑る。
さっきまで意識していなかった睡魔が急激に襲って来た。
自覚していなかっただけで、本当は疲れていたのか……。
そう思ったのを最後に、急速に眠りの中へと落ちて行った。