祝福1

「クラウド、誕生日おめでとう」


ティファに言われた。
朝遅い時間に起きて、セブンスヘブンのカウンターに座った途端に。

一瞬、何の事だか理解が出来なくて、水の入ったグラスを持とうとした体勢で固まった。
誕生日……ああ、そういえば……。
8月11日は、確かに俺の生まれた日だ。
でも……どうしてティファが知ってるんだ?
いくら幼馴染といっても名ばかりで、実際はそれ程深い付き合いがある訳でもなかった。
一緒に旅をしてそれなりに知るようにはなったが。

「誕生日……」
「あれ?もしかして違った?おかしいなー、この日だって聞いた筈なんだけど……」

焦った表情をして、考え込むティファに慌てて首を振る。

「いや、合ってる。でも、誰に聞いたんだ?」

ティファは俺の言葉を聞いて、ホッとした。しかし誰に聞いたのかと尋ねたら、一変して曇った表情になった。
それ程、言い難いことなのだろうか。
気にはなるが、言いたくないなら構わない。

「言いたくないなら、いい」
「あ……違うの。ただ、幼馴染って言ってるわりに、私クラウドのこと何も知らなかったなって思って。何だか情けなくなっちゃって。クラウドの誕生日ね。エアリスに聞いたの」
「え?」

予想していなかった名前が聞こえて、目を瞠る。
確かに、旅の途中色々なことを聞かれはしたが……。
そんな俺の表情を見て、ティファが笑う。

「そんな顔してると、クラウドって幼く見えるよね。エアリスが可愛いって言ってた意味、少し解るよ」

どう返答すればいいのか分からなくて、詰まる。
顔が熱くなったのが分かった。落ち着かなくて視線を逸らす。
というかエアリス……そんなこと言ってたのか。しかもティファ。解るって何だ。そんなの解らなくても俺は一向に構わないんだけど。

ティファはそんな俺の様子を見て更に笑う。
しばらく笑った後、再び口を開いた。

「ごめんね。クラウドこういうの慣れてないもんね。……とにかく、今日はお祝いしようってこと、言いたかったの」
「お祝いって……、店はどうするんだ?」
「今日は休みよ。マリンもデンゼルも張り切ってるんだから。今はそのために買い物に行ってくれてるの」

そう言えばいないと思っていた二人。
成程。そういうことだったのか。

「二人にも教えたのか」

確かに、祝われる事は嬉しい。
けれど……色々な事情があって何年もこういうことをスルーしていた身では、戸惑いの方が大きい。
それにどうしてもエアリスとザックスのことが引っ掛かってしまって上手く喜べない。
こんな俺のつまらない反応でも、二人は楽しめるのだろうか……。
落胆させなければ良いんだけど。

「そうよ。と言うよりも、二人の方から訊いて来たのよ。クラウドの誕生日っていつ?って」
「マリンと、デンゼルが……」
「うん。だから……クラウドは、変なことで考え込んでないで、あの子達の想いを受け取ってあげればいいの」
「そうか。そうだな、やってみるよ」

ティファはアドバイスする為に、俺に話しかけたんだな。
俺の性格ではまた何か思い悩みそうだと、見抜かれたんだろう。
色々と前科有りだからな。

「ありがとう」

ほんの少し口角を弛めて言えば、ティファは吃驚した表情をした後、幸せそうに笑ってくれた。

「どういたしまして」