拍手文1

「なぁ、アンタは……何で、俺の前に現れるんだ?」


大剣の切先を向けたまま、特に意味も無く問い掛けた。
土砂降りの雨の中、瓦礫の上に佇む男が二人。
……全く以って笑えない。

バケツをひっくり返したような豪雨の所為で、いつもは元気よく跳ねまくってる髪も水気を含んで伏せてしまっている。
一体俺たちは、何時間此処で戦ってるんだろうか……。
しかもお互いに本気とは言い難い、遊戯みたいな気の抜けた戦いで。
いい加減、厭きた。


「さぁな。…………お前が呼んでいるんじゃないか?」


その愉快そうに釣り上がった口がムカツク。
止めを刺してやろうか。
結構本気で思ったが、直ぐに面倒になって剣を降ろす。

「ほぉ。どうした……?クラウド」


……その変に甘い囁きを止めろ。
気持ち悪さに思わず鳥肌が立ったじゃないか。
背筋をぞくっと悪寒が走ったな、今。

本当にこの男は、大丈夫なんだろうか……。
頭の中身的な意味で。

でも…………この男の話に付いていけてる時点で俺も、駄目なんだろうな。
深々と溜め息を吐き出す。
目の前で俺の様子を楽しそうに観察してるこのふざけた男を、誰かどうにかしてくれ。
正直こうも毎回相手をしないといけないのは、面倒だ。


「もういい。厭きた……お前いい加減に還ってくれ。一生出てくるなって言っても無駄だろうから、せめて一千年置きにしろ」


かつてザックスにシヴァの眼差しと言われた目でセフィロスを見遣る。
この男にこんな眼差しの一つや二つ、大したダメージは与えられないだろうが。


「いいな、その眼差し……その見下してる感じが最高だ」


………………うわぁ……。
何か、こいつやばい。……滅茶苦茶逃げたいけど、こいつを何とかするのって、結局俺なんだよな……。
世を儚む気持ちって、こういうことを言うんだろうなぁ……。
泣きたい気持ちになったって、誰も俺を責めないよな?
ああ……でも、なんか。うん。


すっごく、……ムカついて来た。
イラっとしてる。
今、超絶に。
限界を超えられそうなくらい。


「なぁセフィロス。……いつも喰らってるから、今回も喰らわせても構わないよな?」

こんなにスッキリした気分で笑顔を浮かべられたのは、久々だ。
やっぱり、ストレス発散には、斬り付けるのが良いっていうよな?
え?違う?……いやいや、そんな細かい事はどうでも良い。
今はただ。


超究武神覇斬!!




瓦礫の中に転がるボロ雑巾……。
銀の長い髪が散らばって、黒のコートはボロボロ。
所々血を流していて……この惨状だけを見れば、殺人事件だろうな。
でも。
実際の被害者は、こっちだ。


「ほら。さっさと帰れ」

「っく。また腕を上げたな、クラウド……次の機会には私も、絶望をプレゼントしよう」

些か血走った眼でクックックと笑いながら消えて行くセフィロス。
不気味だ。気持ち悪い。本気で。


その光景を見届けた後。
クラウドは溜め息を吐いて、眉間を抑えた。

「もう一生出てくるな」


その一言を怒気と共に零し、この地を去って行ったのだった。

















以下、あとがきです。



大事な何かを落っことして来た英雄様と、何だかんだ言いつつもちゃんと相手をしてあげるクラウドさん。
この時代設定としては、FF7本編から何千年も経った時代を意識しているので、お互いに戦い方やら性格やら知りつくしてる感じが有ります。
本編がシリアスまっしぐらに進む予定なので、その反動か、息抜きに文章を書いたらこんな感じになります……。
拍手文の方はこんな感じにハッチャけるかも知れないので、苦手な方は注意です。あ。もう遅いですか?